2002年6月
十勝岳遭難事故

2002年
6月9日
十勝岳 死亡(凍死) 男性 65歳 千葉 ツアー
6月9日午前10時ごろ、十勝岳山頂近くで、千葉県の男性(65歳)が倒れ意識不明になった。男性は首都圏からのツアーで入山(客18名、登山ガイドと添乗員各1名)。上富良野側から十勝岳に登り、美瑛側に日帰りで下山する予定でした。登山中に「寒い」と訴えたあとまもなく倒れ、意識不明(呼吸停止)なった模様。
ガイドらは携帯電話で救助の要請をするとともに、天候が悪化したため他の参加者の安全を優先。救助隊の到着を想定し、男性を残して全員下山した。しかし現地は風と雪が強く、上富良野十勝岳山岳救助警備隊が男性を収容できたのは、二日後の6月11日昼過ぎ。死因は凍死だった。男性は雨具をバスに忘れたため、ベストの上にウィンドブレーカーという軽装だった。
ツアーは東京の旅行会社が企画。客の平均年齢は63歳。6月7〜9日の2泊3日で道内2山を登るという強行日程だった。天候は、出発時は曇りだったがまもなく強風と雨、その後はみぞれから吹雪に変わったらしい。
 6月7日・・釧路空港着〜雌阿寒岳登頂
 6月8日・・移動(休養)日〜十勝岳温泉泊
 6月9日・・午前4時出発〜
十勝岳登頂〜旭川空港発で帰京
凄い日程だ。到着当日の雌阿寒岳は往復標準3〜4時間、最終日の十勝岳は標準6時間半の登山時間が必要である。特に十勝岳では、先ず下山時間ありきで、参加者は義務感を背負いながらの歩行になってしまう。帰りの飛行機のことを考えると体調が悪くても「辛い」とはなかなか言い出せないだろうし、スローペースにならないように無理もする。旅行会社は「二日目に休めるように配慮した。メインの山を最終日に登る日程は効率がよい。残雪もある厳しい山と認識しているが、みぞれが降る寒さは想定外。」とのコメントを発表した。平地の観光地巡りならいざ知らず、二千メートル級の山登りである。この時期にみぞれが降るのも珍しいことではないし、効率優先の日程で安全登山に対する認識が甘かったと言われても仕方がない。この会社は他にも同じような日程で道内の山岳ツアーを行なっているらしい。
一方、参加者にも問題はある。自分の技術・体力を理解し、自己責任の意識をもって山登りをしている人なら、こんな強行日程のツアーには参加しなかったのではないか・・・。「2泊3日で北海道の百名山を2山制覇」に惹かれたのだろうが、登山情報や装備等について旅行会社やガイドに頼り過ぎることなく、遭難や事故のリスクについても参加者個人がきちんと認識する必要があると思う。
ガイド、添乗員の責任については、天候悪化時のツアー参加者とのやりとりが不明なので何とも言えないが、地元の人なら中止する天候だったようだ。
今回の事例は、近年多発している本州からの登山者の遭難事故の典型と言える。特に百名山ブーム以後は、旭岳、十勝岳などに遭難事故が集中している。たとえ遠方から来ていても潔く撤退する勇気が必要だ
と思う。
2003年10月8日
今回の遭難事故で、富良野署は10月8日、業務上過失致死の疑いで登山ツアーの
添乗員(53)とガイド(56)の二人を旭川地検に書類送致する方針を固めた。吹雪模様の悪天候なのに登山を続けたことなどから、刑事責任を問えると判断したものである。
富良野署によると、添乗員ら一行19人は2002年6月9日午前4時に上富良野側登山口を出発。避難小屋で朝食休憩後、激しい風雨の中で山頂を目指したが、午前9時40分ごろ、山頂近くの標高1921メートル地点で男性が倒れ、呼吸停止となったため、登山を中止した。男性は雨具をバスに残し、ベストの上に薄手のウインドブレーカーで、下半身はずぶぬれだったという。
富良野署は、《1》避難小屋出発時点で風雨が激しかったのに漫然と登山を続けた《2》男性が軽装で、雨具を着ていないにもかかわらず、安全確保を怠った・・・と指摘した上で、「悪天候時には、一般的注意だけではなく、参加者個人の装備や体調の確認も必要」としている。
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